GOD AND GOLEM, Inc. (はてなダイアリー倉庫版)

2007-2012まで運用していた旧はてなダイアリーの倉庫です。新規記事の投稿は滅多に行いません。

資料が見つからないものについて、TRPGゲーマーの皆さんに質問です

 地味ィな調べモノをしています。
 その中で、解決できていないものを幾つか、公開します。
 はてな質問とかで上げればいいのかもしれませんが、とりあえずこちらで尋ねてみたい。

サタスペについて

 同人時代からのサタスペの刊行物年表が、オンラインだけでは探しきれません。
 本当に本当の初版の『サタスペ』って、一体いつから発売で、どんな刊行経緯を経てきたのか、確実な調査資料はどこかにないものでしょうか。
(R&Rで特集されたことがあるとは聞いたのだけど、その中にちゃんとした年表など、あったら買いたいなあ)

WikipediaのSRS解説について:「ブレイクスルー」の初出はどこ?

 この中に「ブレイクスルー」という語用があるんですが……

「スタンダードRPGシステム:ブレイクスルー(状況打破)」

 この実装上の“上位概念”としての「ブレイクスルー」って、一体どのSRSシステムで言及された初出ワードなのでしょうか? SRSの全部を追っているわけではないので、確定ができません(あるいは、このWikipediaを纏めた人のオリジナルワードなのかもしれないとも思ったり……)。

 ただ、この「ブレイクスルー」がもしSRSで定着した術語なら、TRPGのメカニズム批評がかなり書きやすくなるなと思ってます。

[Admin]近況

 へばってました。
 今後はもう少し調子を上げてゆきたい。

二重マッピング法――『ベアダンジョン』(Dungeons of Bear)7版対応におけるマップ提示の工夫

 昨日から、『トンネルズ&トロールズ』初版時代からある有名なデスシナリオ『ベアダンジョン』のマスタリングをしています。

ベア・ダンジョン (現代教養文庫―T&Tシリーズ)

ベア・ダンジョン (現代教養文庫―T&Tシリーズ)

 Drivethruで売っているもの(http://rpg.drivethrustuff.com/product_info.php?products_id=65655&filters=0_0_0_31801)の日本語訳が、上に挙げた社会思想社版です。ただしこれはT&T5版(社会思想社の文庫版)に準拠したデータ記述になっているので、能力値や運用などは7版にコンバートする必要があります。今回『ベアダンジョン』を選んだのは、5版と7版、あるいは日本のHT&T展開や未訳の7.5版(http://rpg.drivethrustuff.com/product_info.php?products_id=59112&filters=0_0_0_31801)のルールを、T&TのGMとしてどう統合していくかを実際に把握したいという意図もありました。7版でも、5版の『ベアダンジョン』遊べるよ、ということになれば、過去の翻訳物の遺産がむだにならないわけで、T&Tファンにも有用かなと思っています。

 僕のT&Tのインストラクションの仕方は、(T&Tの師匠の影響もあって)既にハウスルールがかなり搭載されているのですが、それはいずれまとめておきたいと思います。今回は、ほかのゲームにも使えそうなtipsを一つ紹介します。
 とりあえず、〈二重マッピング法〉とでも呼んでおいた方がよさげなので、そういう呼び方で記述していきます。ここでいうdoubleとは何かというと、プレーヤーに書いてもらう「手書きマップ/手書きマッピングと、GM自身が別途に切りばりで示す「オートマップ/オートマッピング」の2つのことです。
 過去に行われたマップ提示法と比べて何か本質的に新しいことをしているわけではないですが、ここ1年くらいで入手できるようになった「テープのり」と呼ばれる文具や、TRPG書籍に到来している電子書籍ブーム、またセブンイレブンコピー機でも安価で可能になっているpdf印刷サービスなどを活用しつつ、システマチックに運用を最適化することが、2010年時におけるこの手法の着眼点になっています。
 準備する道具とその実運用について、分けて解説してゆきましょう。

用意するもの

  • ハサミ

普通のハサミです。

 最近普及してきたテープのりです。〈二重マッピング法〉における最重要アイテム。

 こちらも非常に有用ですので、しっかり貼るタイプと併せて買いましょう。Amazonではなぜかバラ売りしてませんが、文具店やLoftの店頭で手に入ります。

  • シナリオの完全なマップ(B4サイズ)

 たとえば僕は、英語版『ベアダンジョン』の4ページぶんのマップをそのままコピーしました。今ならセブンイレブンゼロックスプリントにUSBメモリを挿せば、pdfファイルは1枚10円で白黒コピーできてしまいます(参照:http://www.fujixerox.co.jp/solution/multicopy/02.html)。

  • スケッチブック(B4サイズ)

 マップ用スクラップノートとして利用します*1。画用紙くらいの厚みがなければ、この用途には耐えません。スケッチブックが携行に適さなかった場合、しっかりした厚みのノートで代用してください。
 B4を推奨するのは、これが大きめのサイズのかばんに入るギリギリのサイズであるためです。
 GMの持つ鞄にB4が入らない場合は、いっそA3サイズのスケッチブックを大きな紙袋などに分けて持ち運ぶか、A4より小さなサイズで同様の手法をカスタムするかを選択してください。
(注意:このマップ提示法は、このB4スケッチブックのサイズに沿って、各文具のサイズが最適化されています。ほかのサイズを用いる場合は、それに併せて紙のサイズを調整してください。)

  • 5mm方眼のあるノートパッド

 代表的なものを2つほど紹介しておきます。TRPGに限らず、古典的なマップ有ロールプレイング・ゲームには必須の外部ツールです*2
 B5かA4のどちらかを推奨します。B5だとB4の規格に併せた保管が楽になります。A4だと、ほかの資料との組み合わせによる保管が楽になります。一長一短です。以下に提示するのはどちらもA4のノートパッドです。注意してください。

オキナ プロジェクトペーパー A4 5ミリ方眼 100枚 PPA45S

オキナ プロジェクトペーパー A4 5ミリ方眼 100枚 PPA45S

  • 十分な広さのセッション用テーブル

 今回の手法は、サイズの狭い机には対応していません。オフロード走行(=セッションが困難な状況下でセッションを運用すること)をする際は、適宜、文具の大きさを小さくしてください。

 もちろん、手書きマップ用の筆記具も必要です。シャープペンシルは、製図用の高いものである必要はありません。

運用コンセプト

  • マップを書く楽しみをすでに十分知っている上で、「マップを書き損ねることによる悲喜こもごも」についてはある程度十分に堪能したとテーブル単位で合意がある。
  • Wizardryリメイク版における「オートマッピング」のような効率性を求めている。
  • 未探索範囲のある/なしを公開情報にしても構わない。あるいは、全ての領域を探索する、ということを臨み得ないほど仕掛けが多く、全てを巡ろうとするとまったく終わりの見えないダンジョンであり、そこまでやる必要はないだろうという共通認識が成立している(例:『ベアダンジョン』。ベタにやると、命がいくつあっても足りない)。

 これらの条件がある時、以下に示すマップ提示法は、コンセプトに沿ったものとなります。

実運用(1)――手書きマップのインストール

 GMはまず、「レポートパッド」をPLの前に一枚、配布します。
 レポートパッドの紙面には、パーティの状態にあわせて、視界内に収まっているだろう状態までを示します。

実運用(2)――オートマップのインストール

 次に、B4画用紙を一枚準備します。そしてそこに用意していたシナリオマップ(未探索範囲が見えないようなもの。白地図など)をハサミで切り出して、ドットライナーのしっかり貼るタイプで糊付けし、提示します。

実運用(3)――マップの二重更新

 パーティはPCを前進させます。その際、探索の正否に応じて、「手書きで書かせる」か「追加のマップをハサミで切り出す」かを選択します。
 ある程度踏破したと言える場所は、バラバラだったはずのマップの断片が順次画用紙の上に糊付けされていきます。
 まだ踏破されていない場所、謎がまだまだ沢山ある場所については、手書きマップによる抑圧的な状況が続きます。
 パーティは、手書きマップにも、オートマップにも、好きに追加の書き込みを行なうことができます。

実運用(4)――マップの拡張

 5mm方眼では、既に準備したオートマップと違い、マップの書き込みが終わらなくなる場合があります。その場合、紙から記述がはみ出すこともあるでしょう。
 その場合は、5mm方眼用紙にドットライナーを貼り付け、マス目に併せて新しくまっさらな用紙を貼り付けてください。もちろん、GMは後の保存や持ち運びを考えて、ある程度貼り付け方を工夫する必要はあると思います。またバラバラにする場合、「はってはがせるタイプ」を用いるのもよいでしょう(付箋のようにはがして解体できる)。

実運用(5)――マップの保存

 マップゲームはどうしても時間がかかります。ゲームが途中で終わってしまった場合、マップが散逸しないよう保管しておく必要があります。
 オートマップの方は簡単です。GMがB4スケッチブックの中に挟んで、次回のセッションまでに保管しておいてください。
 手書きマップの方は若干困難です。マップがB4より広大になった場合、オートマップに収まらない可能性があります。ドットライナーの「はってはがせるタイプ」の使い方を工夫したり、不要な空白部分をハサミで切り出してなんとか収まるようにしたり、色々と努力してみてください。
 もし、サイズの収まりがよさそうならば、そのままドットライナーのはってはがせるタイプを使って、B4画用紙に貼って保存してもよいと思います。

実運用(6)――マップの再開

 次のセッション時に、スケッチブックから「手書きマップ」と「オートマップ」の両方を取り出して、パーティの探索場所を確認してください。それから、前回と同様の運用を繰り返します。

 以上で〈二重マッピング法〉の手法説明は終わりです。
 スケッチブック、ハサミ、5mm方眼、ドットライナー二種、場合によってはpdf出版のシナリオやコンビニのコピー機サービスなどと組み合わせれば、ある種のマッピングの時間を効率化し、ダンジョンの仕掛けそれ自体に集中できるようになります。

二重マッピング法によって損なわれるもの

 二重マッピング法は、テーブルの合意に沿って運用されなければ、むしろダンジョン系シナリオの楽しみを奪いかねないものでもあります。以下の条件にあてはまりそうな場合は、古典的な手書きマップに一本化するか、マッピングをより抽象化した〈システム選択〉を行なうことも考慮に入れてください。

  • 公式シナリオのあるマスタリングならともかく、完全自作であることも多いだろう。その場合、マス目に対応した原型をつくる手間がかかるので、汎用性という点では若干難ありのテクニックである。
  • 5フィート四方にある程度の幅を必要とするD&DやT&T*3では、準備したオートマップの大きさより、手書きマップの大きさの方がしばしば上回る。実際のマッピングの状況を事前に考慮しなければ、マッピングしきれないほどの巨大なダンジョンがテーブルに開示されることになりかねない。
  • そのマップのその部分に関しては概ね調査し終えた、というメタメッセージを公開情報に含めてしまう場合がありうる。新規マップで手書きなうちは「何かがある」ことはわかってしまう。また、それにもかかわらず先へ進んだ時に空白地帯が出来た時や、ワープ装置などでマップに飛び地ができた場合の例外処理などに、この二重マッピング法は対応しきれない場合があるだろう。

 こうした難点がありますが、もしかしたら運用のちょっとした工夫で解決できるかもしれない、とも思っています。
 空間を扱う国産RPGは、80年代までの古典的マッピングの煩雑さをどんどんと新しいメカニズムに置き換えることで進歩していったという側面が大きいと思います(僕も、その恩恵をしばしば受けています)。
 しかし一方で、こうしたGM側の工夫によって、案外四半世紀前の古典的マップゲームも近代化できるんじゃないかな? と思って、この手法を編み出してみました*4
 家に埋もれているクラシックTRPGシナリオを再演してみる際、活用してみてください。
 

*1:このあたりの技術は、立花隆『知のソフトウェア』や野口悠紀雄『「超」整理法』における、なんでもBやAで規格化・保存・管理してしまう発想に影響を受けています。

*2:この点、『世界樹の迷宮』シリーズは素晴らしかった。『世界樹の迷宮』は、プレーヤーの側が攻略の便宜上、外挿しなければならなかったマッピングの魅力を、ソフトウェアの内側に持ってきた。

*3:3e以降のD&Dはグリッドマップ戦闘という特性による。T&Tは、武器の長さや乱戦というゲームメカニズムの要請が、ダンジョンの通路の幅をどうしても広げずにはいられないという特性による。ちなみに僕のT&T運用では、「幅5フィートしかない直線通路では、よほどSR判定に成功しなければ乱戦の前提が崩れ、1対1戦闘になる」という裁定基準を持っています。

*4:とはいえ、実際に思いついたのは前日にマップを準備する段になってからですけれども……ともあれ、古今東西の優れた作曲家に応答するためには、演奏技術もどんどんシステマチックにしていった方がいいと思うんですよね。

100320_Sat:『愛のむきだし』における宮台神父の説教・その後

 宮台真司さんご本人が、地下鉄サリン事件から15周年(1995年03月20日より)の今日この日に、自ブログのに書き起こしスクリプト「架空のカルト教団『0教会』における宮台真司の似非説教全文」を転載付で紹介してくれました。お役に立てたようで幸いです。

宮台真司,2010,「高橋志臣さんがブログで、園子温監督『愛のむきだし』における僕の似非説教を文字起こししてくれました」『Miyadai.com Blog』(http://www.miyadai.com/index.php?itemid=858,2010.03.20).

 本記事とほぼ同じものになっていますが、句読点などはご本人によって修正されているようです。引用の際はそちらを使うのが良いと思われます。

 2010年03月現在、『愛のむきだし』は早稲田松竹で昨日まで再公開されていました。僕は忙しくて見に行けなかったのですが、未見の方はぜひDVDでなく、スクリーンでごらんになることをおすすめします。僕はDVDでも圧倒されました。行きたかった……。

RWS管理人さんがTRPGライターデビュー&クトゥルフ神話コミカライズ

 ところで、以前Co-Conでプレーヤーとしてお世話になった腕利きCoCキーパーのRWS管理人さんが、TRPGライターとしてデビューしたそうです。おめでとうございます。
 デビュー作は『Role & Roll』vol.64の「ニャルラトテップのひみつ」だそうです。先日知ったばかりなので、ぜひ読んでおきたい。

Role&Roll Vol.64

Role&Roll Vol.64

そして今回の『クトゥルフ神話2010』紹介も熱いので、ぜひごらん下さい。

クトゥルフ神話TRPG クトゥルフ2010 (ログインテーブルトークRPGシリーズ)

クトゥルフ神話TRPG クトゥルフ2010 (ログインテーブルトークRPGシリーズ)

クトゥルフ神話TRPG』の面白さについては、そのRWS管理人さんがキーパー(=CoCにおいて、ゲームの運用・管理を務める人)として遊ばせてくれたセッションのレポートがあります。ぜひごらん下さい。

■高橋志臣,2008.01.21,「Co-Con『クトゥルフと帝国』セッション」
http://d.hatena.ne.jp/gginc/20080121/1200932033

 そうそう、クトゥルフといえば、最近買った『クトゥルフの呼び声』のコミカライズも良かったです。人にクトゥルフのエッセンスを伝える際に使いたくなる一作です。『ラヴクラフト全集』に挑んで挫折した方はぜひ先にこちらをどうぞ。
 そしてこの本のもう一つの価値は、クロノスケープ代表の森瀬繚さんによるラヴクラフトラヴクラフティアン史のサマリーとして非常にわかりやすいことです。漫画より多少ページを食っている感もありますが(笑)、それがあることで漫画の意味も深まるような文章になっています。クトゥルフ神話知識に関しては日本屈指の森瀬さんの力作、ぜひ漫画と合わせてごらん下さい。

クトゥルフの呼び声 (クラシックCOMIC)

クトゥルフの呼び声 (クラシックCOMIC)

 連鎖的にいろいろなものを紹介してみました。

芝村裕吏氏によるCoCほか、BRPの運用論

 ゲームデザイナーの芝村裕吏さんが、『クトゥルフ神話RPG2010』発売について触れつつ、アクロバティックな運用法について紹介していました。
 togetterというまとめサービスを使ってまとめられています。まとめ人の方お疲れさまです。

芝村裕吏さんによる「クトゥルフ神話TRPG クトゥルフ2010発売記念」
http://togetter.com/li/8219

  1. ジョジョの奇妙な冒険』や『エルナサーガ』など、歴史・伝奇の連作シナリオ再現をしてみる(スタンドは『ストームブリンガー』のルールを混ぜるとよりよい)
  2. 自分の考えた背景世界をBRPで記述してみる(シンプルなD%システムなので、解釈負荷が軽い)
  3. BRPが統一書式つまり「物さし」になっていることを利用して、豊富なデータ同士を比較して演出を公案してみる
  4. 「処理系が古くてもデータは古びない」という発想の元、BRPで記述されたデータを最新の処理系(=〈システムデザイン〉)で補完してみる

 というような話をしていました。3番目の遊び方については、TRPGシステムのデータ解釈に定評のある小太刀右京さんと三輪清宗さんの名前も挙がっていました。*1
 芝村さんは、TRPGデザインにおける設計と運用の違いと、その両方を活かすことについてしばしば意識的な発言をされていますので、TRPGゲーマーの皆さんもぜひチェックしてみるとよいと思います。

クトゥルフ神話TRPG クトゥルフ2010 (ログインテーブルトークRPGシリーズ)

クトゥルフ神話TRPG クトゥルフ2010 (ログインテーブルトークRPGシリーズ)

*1:この二人は、『天羅WAR』や『Aの魔法陣 ガンパレード篇』など、原作有ゲームシステムのメインスタッフとして関わっており、それらの作品では原作のニュアンスを活かしたデータ設計,背景世界説明の妙を見ることができます。こうした仕事の評価は、もっと話されてよいと思います。

RPToolsとSurfacescapes――「デジタルTRPGの未来」について、二つの覚書

 高橋です。今回は、オンラインTRPGをサポートする二つのインターフェース事情について紹介します。
 一つは、これまでも何度か紹介してきたRPツールズ(RPTools) のマクロ翻訳記事について。
 もう一つは、Microsoftカーネギー大学と共同開発しているサーフェスケープス(Surfacescapes)についてです。

RPToolsのマクロについて

 11月以降、RPToolsの翻訳がうまくいってません。
 修士論文の執筆の前後にスケジュールが狂ってしまい、せっかくid:thalionさんやFourwoodsさんに協力して頂いたのに頓挫しているところです。また、開発者の方に翻訳ファイルを渡す作業もできていません。すみません。
 三月になったら色々と楽になるので、昨年からの宿題は一つずつ解消していこうと思います。
 それでも、さりおんさんのお陰で、RPToolsのもっとも高度な機能である「マクロ」の初歩の部分が、日本語で読めるようになっています。

RPToolsドキュメンテーションWiki「はじめてのマクロ作成」
http://lmwcs.com/rptools/wiki/Introduction_to_Macro_Writing/ja

 これで、PC上でのゲームデザインとしては、『CardWirth』のようなシナリオエディットを自前でやりつつ、自分の望むシチュエーションに関連する計算はマクロで揃えるという、ハウスルール好きのゲームマスターにとってはかなり自由度の高いゲームデザイン環境が整ってきたということになりそうです。
 まだマニュアルは完全ではありませんが、RPToolsに類するプログラムへのアクセスが今よりもっと容易になれば、90年代にフリーのRPGにはまっていたようなゲームユーザも、現行のTRPG製品(国産/海外問わず)に近づきやすくなるかもしれません。
 こういう方向性での“日曜ゲームデザインが、技術の進展によってよりかんたんになることを、心から期待しています。

Surfacescapesと、「タッチパネルでやるボードゲーム」の可能性

 先日、Apple社がiPadを発表したことが記憶に新しいですね。
 しかし一方、ライバル社であるMicrosoftも、べつの方向で製品開発を進めています。
 Microsoft社は、Apple社に先駆けて2007年には既にBtoBの製品として提供しています。タッチパネル式の“筐体型”インタフェース、『マイクロソフトサーフェス』(Microsoft Surface)です。これは当初は100万円前後するほどの高額製品だったのですが、今はもう少し安くなっているようです。

 実際のブツは、次のリンク先の写真でご確認下さい。

■What is Microsoft Surface?
http://www.microsoft.com/surface/Pages/Product/WhatIs.aspx

 さて、このMS Surfaceに関わるプロジェクトの中で、アナログゲーマーならきっと面白がりそうな技術があります。『サーフェスケープス』(Surfacescapes, or SurfaceScapes)です。MS Surfaceの上で動く、TRPG用マップ再現アプリケーションなのだそうです。

カーネギー大学『サーフェスケープス(Surfacescapes)』公式サイト
http://www.etc.cmu.edu/projects/surfacescapes/index.html
Microsoft SurfaceのSurfaceSpaces紹介記事
http://blogs.msdn.com/surface/archive/2009/10/19/dungeons-dragons-done-right-on-microsoft-surface.aspx

 公式サイトの紹介文を引用しておきます。(適宜強調表示)

What is Surfacescapes About This Project

The objective of the SurfaceScapes project is to create a proof-of-concept for playing tabletop role-playing games on the Microsoft Surface Table. We will be using Dungeons and Dragons as a basis for our prototype, with the option for future expansion to other role-playing games. SurfaceScapes will provide Game Masters and players with a set of features to enhance the combat and role-playing aspects of tabletop games. This will include the ability to interact with the digital environment using real objects such as miniatures and provide automated calculations and visual and audio feedback for actions performed by the player and non-player characters. We are taking traditional tabletop role-playing games to the next level, adding a new layer of immersive and intuitive gaming to the Microsoft Surface Table and assisting both GMs and players in enjoying exciting and engaging adventures.
SurfaceScapes… what lies beneath.

 適当に意訳してみました。

サーフェスケープス』は、タッチパネル式で卓上型RPGをサポートするツールです。MS社のMicrosoftSurfaceの上で動きます。D&Dとかその辺のTRPGをとりあえず念頭において開発しました。TRPGにおける戦闘やその他の状況を再現できるデジタル環境を提供します。ミニチュアを置いたり、計算を自動化したり、映像や音をPCやNPCの行動処理にあわせて出したりする仕組みが盛り込まれています。これで伝統的なTPRGは次のレベルへ――つまり、GMとPLとが、どっぷりとその世界に浸かれるくらい直観的なインタフェースによって、TRPGの冒険を遊べるようになるわけですね。

 という感じでしょうか。

 なぜ「サーフェスケープス」という名称なのかについては、こう考えてみました。ひとつの表面(surfaceサーフェス)から、現実と異なるゲームの状況へと脱出(escape/エスケープ)する時、表面からいくつもの柱身(scapes/スケープス)が立ち上がる……ということで、造語 "surface+escape+scapes; surfacescapes" ということなのかもしれません……たぶん。
 二次元から異世界、あるいは二次元から三次元。どっちとも取れて、面白いですね。

 では、実際の動画を見てみましょう。

Surfacescapes Demo Walkthrough from Surfacescapes on Vimeo.

 
 こんな感じです。
 今やiPhoneでサイコロも振れる時代ですものね。今後、こうした機器がどんどん発達して、TRPGでもデジタルとアナログの区別を立てる意味は、徐々に薄れていくのかもしれません。

 ところで、このSurfaceScapesを知ったのは、デジタルゲーム人工知能について研究されている三宅陽一郎さんのブログがきっかけです。三宅さんは、このSurfaceScapesの登場から、次のようにゲームの未来を予見しています。

近い将来、家庭のタッチ型ディスプレイのうち少なくとも一つは平行に置かれるようになり、
何百というボードゲームがインストールベースで遊べるようになるだろう。

もちろん、手札を持つタイプのゲームはどうするのか、という問題もあるが、
モバイルのディスプレイか、一方向に透明な遮蔽版(プレイヤーからは向こうが見えるが向こうからは見えない)があれば可能だろう。

ボードゲームは大型でかさばるという難点があり、それがまたいいところとは言え、
何百というボードゲームの置き場所に困っている方は大勢いる。

もし、ボードゲームがダウンロード、インストールでプレイされるようになれば、
何千というボードゲームをPCに入れて遊べる時代が来るだろう。

そういった時代には、ボードゲームデザイナーは、今よりもっと脚光を浴び、
新しいタイプのボードゲームも産まれて来るだろう。

三宅陽一郎,2009,「MS Surface がもたらすボードゲームの革命」『y_miyakeのゲームAI千夜一夜』(http://blogai.igda.jp/article/34277316.html, 2009.12.19).

 それでも将来TPRGが、なお「アナログ」という要素を残すのだとすれば、それは「ゲームマスターがリアルタイムでシナリオを運用し、その調整を行なう」ということと、深く関わってくるのではないかと思いますね。

■高橋志臣,2007,「ロールプレイング・ゲームの批評用語〈セッションハンドリング能力〉
http://www.scoopsrpg.com/contents/hakkadoh/hakkadoh_20070927.html#ability_sh

というわけで

 「デジタルTRPG」の未来を予見させる、二つのインタフェースについてお伝えしました。

すみません

 目が腐ってたのか、ScapesをSpacesと見間違えていました。ごめんなさい。
 また、MS Surfacesについての記述も増やしました。iPadより先行していること、また筐体である高価な製品であることから、BtoBメインの製品であったことは前提として重要です。

『デッドマン・ウォーキング』を遊んだ

 冒険企画局のゲーム、『デッドマン・ウォーキング』(DMW)を遊んだ。
 これは『サタスペ』シリーズのサプリメントでありながら、同時に「独立したゲーム」としても遊べるコンポーネント。今回は単体ゲームとして遊ばせてもらった。使うサイコロは各人2d6。
 DD(=DMWにおける〈ゲームマスター〉のこと)のシステム導入と進行管理、もろもろのシステム改造の技巧(つまり〈運用〉)が加わったことも相俟って、とても、面白かった。DMWは使い手によって、色んな挑戦ができるゲームなのではないかと感じた。

 遊びながら考えたこととしては、

  1. 判定系や管理資源の設計、ルールブックについて〈システムデザイン〉評価)
    • Aの魔法陣』の「1の目ルール」の処理とサタスペ系における「ぞろ目失敗」ルールがそれぞれ与えるゲーム感覚の違いについて
    • 「血戦」における「ジオラマ」まわりのルールといわゆるD&D的なダンジョンRPGのマップ記法との関わりについて
    • WoDWraith: the Oblivionとの思想の違いについて
  2. 考えうる改造と運用の指針〈マスターリング〉評価)
    • 今回のDDが開発してくれた、「屍人歩き」における「移動」概念のハウスルールについて
    • 今回のDDが開発してくれた、屍人歩きを一階構造から高階にする方法について
    • DMWをパラノイア的に楽しむ時の「+500年刑期」「3回制限」「地縛霊」など、セッション中に思いついたハウスルールについて
  3. 一プレーヤーとして遊んでみた感想について〈プレイング〉評価)
    • サタスペ』との連結のなかで考えられる世界観解釈(特に「仙侠」と「業〔カルマ〕」について)
    • サタスペ』など冒険企画局系のゲームデザインにおける、「index-symbolサイクル」という観点から切り取った思想の評価について
    • セッションレポート

 というのがあるのだが、たぶん実際に文章にして評判がよさそうなのは2,1,3の順(ただしセッションレポートは特別)かな、と思っている。
 いきなり全部書けるかどうかはわからない(し、多分全部は書かない)と思うけど、2についてはなんとか時間をつくって、あっさりと書きたいと思う。セッションレポートは、身内向け以外には時間次第かなと思っている。どうせなら『クトゥルフと帝国』を遊んだとときのようにしっかりとやりたい。
(それにしても、CoConのあのゲームは面白かった。時間がなくあれから一度も行っていないが、RWS管理人さんの丁寧なマスタリングはまたぜひ遊んでみたい)
 ともあれ、2010年の日本のTRPGデザインの達成にものすごく希望が持てる、そんなシステムだと思う。
 遊んでみた結果をフィードバックして、自分も運用できるレベルにまでバラしてみるつもり。
 遊ばせてくれたDDと、一緒に遊んでくれたプレーヤーの皆さんに感謝。

そういえば

 遊んだ帰り、昨年夏にMechWarriorの最新版を遊ばせてくれた先輩に『ヴェルトロ・オーバードライブ』という同人TRPGがあることを紹介した。

『ヴェルトロオーバードライブ』
http://home.att.ne.jp/blue/mizukeso/VODmenu.htm

一度友人宅で読ませてもらっただけなのだが、同人なのに300ページを超える重厚なルールブックが今でも印象に残っている。いつかFASAのゲームやその他のロボットゲームと比較しつつ受容してみたい。