GOD AND GOLEM, Inc. (はてなダイアリー倉庫版)

2007-2012まで運用していた旧はてなダイアリーの倉庫です。新規記事の投稿は滅多に行いません。

「T&T7th/!Turning Over」について

 『ロール&ロール』に掲載されたT&T(トンネルズ&トロールズ)7版のシナリオ「ゴブリン岩の迷宮」を、11月からずっと続けていました。

Role & roll vol.31―For unpluggedーgamers

Role & roll vol.31―For unpluggedーgamers

 私のプレイグループはRPToolsに独自の日本語化パッチを当てて、さらにアイコンは自作するという結構カリカリのローカライズチューンをかけています。

RPTools(はてなキーワード
http://d.hatena.ne.jp/keyword/RPTools

 またT&Tを、死にやすいコメディ風のゲームとしてではなく、ルール習熟の手数をできるだけ軽量化しながら、D&D3.5に(少なくとも、低レベルから始める初速の段階では)劣らない戦術ゲームを遊べるように、さまざまなハウスルールを導入しています。そして、それに合わせてシナリオの内容をかなり変えてもいます。
 ですから原作者のケン・セント・アンドレのダンジョンそれ自体を厳密に評価できるセッションには全然なっていないのですが(笑)、個人的には「手を入れればどんなトーン(雰囲気)の冒険にもできる、優れた叩き台」として非常に良くできている、おもちゃ箱のようなダンジョンでした。
(ちなみに、プレーヤーたちはダンジョンの全部を踏破できているわけではありません。食べ残しがあってちょうどいいくらいの分量になってます。いかにも洋ゲーっぽいつくりですね。)
「一つ目のダンジョンが半年で終わった」という発言は、一見して結構長く感じられるかもしれませんが、実際はこの一つのダンジョンを巡ってさまざまなシティアドベンチャーを導入してもいました。半年掛けて、ホームタウンと近場のダンジョンを巡るロングキャンペーンをやった感覚に近いですね。途中では『Aの魔法陣』第三版をT&Tと合体させて、描写重視のゲームを行うなどもしましたし、また昨年夏ごろからテスト開発を進めている『MOD(仮)』も採用したことがありました。

 整理してみると、これだけのものがここ半年のゲームに関わっています。

 これらすべてをローカル運用した作業を、『トンネルズ&トロールズ』における自分なりの運用「T&T/!Turning Over」と呼んでいます。「ターニング・オーヴァー」の由来は、自分が昔『Aの魔法陣』についてまとめた記事です。Aマホ的なものを受け取って、自分なりにT&Tを動かしているのが「T&T/!TO」です。
 ですから厳密に『T&T』を遊んだというよりは、「高橋志臣が2008年度からサポート開始したちゃんぽんファンタジーTRPG『T&T/!TO』(非売品)をやってるのに近い状態でした。
 とはいえ、無理にそうやっているわけではなく、T&TはD&Dやその他の製品と違って手を加えること前提のシステムになっているので、プレーヤーの趣味嗜好に沿うよう、独自のゲームを提供しようとすると、どうしてもそういう方向に(手を加えた方が面白い、と思わせるように)出来ているんじゃないかと思います。
 そしてT&Tのそういう特徴は、決してクソゲーという意味じゃないです。TRPGシステムの評価基準として着目すべき「優れた可塑性(可鍛性)」を「単なるサポート不足」と見ると、T&Tは面白くない。T&Tを「可塑性の低い、サポート不足のRPG」と一緒にしてはいけないのです。T&Tはむしろ「改造しよう」と思った時に、どんなゲームよりも良好なレスポンスを返してくれるところが魅力なのではないか。そう思ってます*1
 ここ半年でGMとして勉強させて貰ったことは甚大であり、プレイグループの四名には感謝してもし足りません。とりあえず、ブログのネタにする前に、セッションログをいわば「棋譜」として整理しつつ、身内サイトのコンテンツを充実させていくことに注力していこうかと思います。
 それにしてもT&T、面白いです。『ソードワールド』や『アリアンロッド』も面白いですが、カスタマイズ性の高い(ローカライズに対する応答力の高い)2000円以下の価格帯のゲームは、これと『Aの魔法陣』がやっぱり光ってるよなあ、と思います。
 しかし、システム単体で推奨しても、この主張はうまく伝わらないわけで、やはり〈運用〉について語っていかないといけないのだろうな、と思います。

トンネルズ&トロールズ 第7版 (Role&Roll Books)

トンネルズ&トロールズ 第7版 (Role&Roll Books)

 そんな意味で、T&TとD&D、両方のデザインコンセプトを伝えてくれる先輩がいたことは、ものすごくありがたいことだと思っています。故郷札幌の中高時代に受けた薫陶は、二十代中盤にさしかかるころになってようやく活かせてる感じです。

*1:私がシステムの良し悪しよりGMを重視してきた理由の一つは、このシステムの可塑性・応答可能性を評価するためには、システムだけでは足りないと確信しているからです。GM批評とシステム批評が相互乗り入れしてこそ、はじめて「TRPG批評」なるものがまともに立ち上がるのだと思います。