ドイツ剣術の術理、日本剣道の術理
合氣道タグをつけながら、西洋剣術の話。ファンタジックな話に近づきますが、あくまでゲームの話ではなく古武術の文脈で語ります。要注意。
まずはこの動画を見てください。ニコニコではなくYouTubeです。
■ロングソードによる剣戟(Fechten mit dem langen Schwert)
fenceを「剣戟」なんて意訳していいのかわからないですが、「フェンシング」だとレイピアのスポーツを思い出させるのであえて「剣戟」としました。
これは「ドイツ剣術」という、欧州の方で伝わっている剣道の型みたいなもののようなのですが*1、どうもこれ、金属剣を使って、布の上からガンガン斬り合ってるみたいなんですよね。ちょっと危なすぎないか? と思うわけです。剣道から防具を外して、居合刀に変えてやりあうようなものですからね。怪我をしないものなのか。
それよりも、この技の種類の豊富さ。私は小学校から高一まで剣道をしていたので(弐段です)、日本剣道の作法についてはそれなりにわかるのですが、「こんな技は現代剣道にはありえない」ってのばかりで。
- 「柄の底で相手の首を打つ」
- 「蹴りを入れて相手の腕を取る」
- 「受け流しを利用したまま相手を切っ先に飛び込ませる」
- 「武器落とし動作で関節を極めた後に流れで首を掻き斬る」
- 「刀を短く持って至近距離に飛び込み首を刎ねる」
むしろ、戦国時代の古武術にはあったかもしれないような技ばっかりですね(笑)。
武道館でたまに行われる古武術演武会などでは、似たような荒業をやっていたような気がしますが、少なくとも現代剣道では全部削ぎ落とされてしまった。それに較べてドイツ剣術は、泥臭いまま現代に伝わってる感じですね。剣道の「面・篭手・胴」よりも動きの範囲がずっと広い。
もうすこし剣道について見ていきましょう。
たとえば、剣道で有名な栄花選手の技の決め方。
圧倒的な三連撃。1秒で3本取ってないか?
こういう、鍔迫り合いや竹刀のぶつかり合いが無い流麗な打突〔だとつ〕が試合では「望ましい」とされますし、また日本剣道形〔けんどうがた〕でも
大体こんな感じで、ロングソードの使い方とはかなり違ってきますね。最初の第一〜第三あたりは似通っているところもあるのですが。
もちろん近代化され、良くも悪くも泥臭さが削ぎ落とされてしまったからだとは思うのですが、「西洋の幅広剣の使い方」と「日本刀の使い方」との間に、思想的な違いがあるのではないかという見方もできそうですね。ドイツ剣術、習ってみたいですね。
でも、こんな扱いもされるようなので……
なんかロングソードが棒術みたいな使われ方してるんですけど。ああ、そっか重みで斬るから根元がなまくらなこと前提……? あ、ちょ、ま、ラリアット決めてるよアータ。
いやあ、凄いですね。今紹介した2つのドイツ剣術演武は、何度見ても飽きません。得物もった(古)武術に国境線はないのかもしれないなと思うきっかけになりました。ラリアットに見えるアレ、日本合気道協会(富木流)の合気道の技にかなり近い倒し方のようにも見えますし、もし富木的な倒し方であれば、非常にスマートですね。*2合気会その他の「四方投げ」と似たような武器解除も見られます。
おまけのむかしばなし
ところで、こういう話を論じるサロンだったはずの『滝瓶太郎 Sword World』がなくなってしまったようで、残念です。インターネット黎明期の頃にお世話になったファンタジーファン、武術ファンも多かったのではないでしょうかね。『秘神大作戦』の坂東さんが常駐して、色々教えてくださったのを思い出します。
ああいう場所は、昔ほどは需要が無くなったのかもしれませんね。
ところでうぃきぺでぃあの
「西洋剣術」の項目、ToFとかを手がけていたプロの人の犯行じゃない?
神道無念流の宗家、中山博道が書いた『日本剣道と西洋剣技』って本らしいですけれど、本当にこんなに一冊で詳しく書いているのかしら。
大学同士を横断している資料検索データベース「Nacsis WebCat」で調べたところ
- 横市大 005397259
- 金沢星稜大 789.3/N71 0147054
- 広大中 789.3:N-45/HL018000 0130472855
- 阪南大 図 60000692461
- 秋県大 101148088
- 秋県大本 789.3||B83||4 101101491
- 城西国大 5002048414
- 信大教 図 789.3:N 45 0710246216
- 新専 789.3||NA 10062627
- 大東大松 /789.3/N45/ 1211920844
- 東女体大 図 789.3||N 000150562
- 奈大 図 789.3/N45 315344
- 鳴教大 図 789||B83||4 11088850
- 麗沢大 図 789.3/B83/4 000412457
にはあるみたいですよ。お近くの方は探してみては。
都内の図書館には「口述集」しかないですね。これは相当な稀覯本だ。
どうもミスリードしちゃったみたい
この話は、「西洋」対「日本」とか「スポーツ剣道」対「実践剣術」の対立で見ているわけじゃないんです。単に「異なる2つの流派で見られる武術(剣術)的な考え方の違い」について述べたものです。
で、私は「現代剣道」も、突き詰めれば立派な「武術(剣術)」の一つだと考えてます。この辺には異論もありましょうが、ともかくそういう立場から述べたものだということを末尾に付言しておきます。
しかし、剣道を「武術の一流派」として見るという考え方が、そもそも一般的ではないですね。どうもすみません。合氣道やってると、過去10年やってた剣道をそういう風に見るクセがついてしまって……。