GOD AND GOLEM, Inc. (はてなダイアリー倉庫版)

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『世界樹の迷宮II』

 実はニンテンドーDSを先日ようやく手に入れまして、たまにやってます。

世界樹の迷宮II 諸王の聖杯(特典無し)

世界樹の迷宮II 諸王の聖杯(特典無し)

 以下、ゲームの解説。


ウィザードリィ』のような3Dダンジョン探索RPGの面白さの一つに、「マッピング(地図作り)」の楽しみがあります。
 特別な方法を使わない限り俯瞰することができない迷宮の内部を、一つ一つ踏破していきながら手元の白地図なりProject Paperなりに書きつけ、全容を脳内に再構成していく。
 そういう「空間把握の楽しみ」には、中毒的な魅力があります。
 しかしそういった「マッピング」の面白さは、おそらく日本の多くのデジタルゲーマーにとっては、どちらかといえば「マイナーな遊び方」になってしまっていると思います。いくら『リルガミンサーガ』が傑作であっても、古典WIZの面白さを今のユーザーに周知させるのは、ストレートにはいかないんじゃないかと思います。*1
 そこで、「わざわざユーザーに白地図を用意させることもなく、かといってオートマップでお茶を濁すでもなく、はじめからコンピュータRPGユーザーインターフェースに地図作り機能を搭載すればいいんじゃなーい?」ということを実際に試してみた。これが『世界樹の迷宮』がやってくれたことだと私は思っています。*2
 ニンテンドーDSの下画面を常に「書き込み可能なマップ画面」にして、上に通常の3Dダンジョンを表示する。そして、プレーヤーは上の進行を見ながら、下の方に壁や床、アイテム、徘徊する敵などを地図画面にタッチペンで書きつけていく。昔は大きなブラウン管モニタの前でやっていた「マッピング」の作業が、DSの小さな2画面だけで完結していることが、『世界樹の迷宮』シリーズのウリです。
 大ヒット、とまではいかないまでも、国内だけで10万本以上売れているそうです。最初の一週間で86000本捌けたもよう。世界樹にはI,IIともに英語版もでているそうなので、シリーズを合計すると世界でもそれほど悪くない売れ行きになっているではないでしょうか。おそらく30万本前後は出ていると思われます。*3
 『世界樹II』の内容が、WIZその他の3Dダンジョン探索RPGと較べて本質的に向上した点があるか? といえば、特にそういうことはないかな、と思います。「昔のゲームにすでに備わっていたもの」のいろんな部分が、『世界樹II』の中に散見されます。そしてそれぞれのパーツについて、特別な目新しさがある、とはあまり思いません。これまでの3DダンジョンRPGの文脈からは、大きく外れてないわけです。
 しかし、基本的な〈ゲームコンセプト〉──「3Dダンジョン探索RPGは○○だから面白い」──の「○○だから」の部分を1つ1つ丹念に探しつつ、かつ現代のユーザーも「マッピング」まで含めて楽しく遊べるよう、さまざまな工夫をしていると思います。おかげで手元に白地図がなくても、ストレスなくサクサクと「マッピング」の楽しみを味わうことができるようになりました。
「パソコンや家庭用ゲーム機にかじりついて、自分だけの地図を作っていく」というニーズよりも、「できるだけ余計なものを用意したくないけど、地図づくりならまあ楽しめるかもしれないな」というニーズの方が重くなってきた。そういう時勢にほどよく適したゲームデザインだと私は感じました。
 さて、いちおうTRPGの話もしておくと(笑)、新和D&Dゲームマスターセクションには「ダンジョンマップの記号表現一覧表」みたいなのがありました。今でもWotCでは、そうしたダンジョン記号の見本を無料で配布しているところがありますね。
 しかし、『世界樹の迷宮II』には最初からそうしたマップ用アイコンが右側に用意されており、タッチペンでドラッグ&ドロップ配置できます。自分で記号を覚えておかずとも、その場で問題なく地図を作れれるというのがまた、敷居が低くていいですね。
 いわゆる「育てゲー」としてもよく出来ています。1人のキャラ方針が立ったら、そのほかのキャラがそれに合わせて別方向に成長していかなければならない。どのクラスも大体は属性対応(支援系は特殊攻撃対応)ができるようになっているのに、「誰を基準にスキルポイントの割り振りを考えるか」で成長戦略がガラリと変わってくるように設計されている。データ重視のゲーマーでも、キャラ萌えでがんばるゲーマーでも、結局は巧く「自分のひいきキャラ」を定点として決めてからパーティ設計を考えていかなければならないよう、うまく誘導している。そこがニクイなと思います。
 登場人物が一切台詞を発さないあたり、国産では『ドラクエIII』のような雰囲気も醸し出しています。ゲーム中に語られない「物語の空白」を、過剰に用意している。90年代コンピュータRPGファンには特にたまらないものがあるのではないでしょうか。
 ところが、ドラクエやWIZと違って、モンスターは金貨を一切落としません(代わりに換金・加工可能な素材を多数落とします)。そこがまた周到なこだわりだと思いますね。
 スキルシステムは『ラグナロクオンライン』などを参考にしているのかもしれませんが、それより先行例がありそうなので、ちょっとよくわかりません。またスキルシステムと関連して、個人的には「5LVダウン/スキルポイント振りなおし」の制度が非常に新鮮でした。
 次は久々の『ゼルダ』でもやろうかしら、とか思いつつ、『世界樹II』をそんなにやりこむ時間も作れていない。今月中はあれこれ片付けることが多くて、半端に休業状態です。ふだんしない話をする期間に当てています。

おまけ:世界樹IIの進行について


 現在以下の面子がスタメンに入ってます。キマイラ広場突入より少し前くらいの様子。

  • ギルド名「B.T.L.」*4
    • 前衛
    • 後衛
      • メディックLv17(金髪,回復マスタリMAX,リザレクション&エリアヒール専門)
      • ガンナーLv17(メガネ,属性攻撃or全体攻撃,威嚇射撃GJ)

 この中では特に、アルケミストがダルい顔して攻撃に防御にと、良くがんばってくれています。後衛に置くのが正解なのでしょうが、ブシドーの打たれ弱さを補正するため前線でダメージ分散をしてくれている。こないだ初めてリミットブレイク*5の「超核熱」を見ましたが、突然ダメージ4桁超えて驚きました。

 ところでWIZだと6人なのに、世界樹では5人しか入れられないんですよね。ですので思わず、第六の「ギルド長」として道化的役回りの奴が一人いるんじゃないかな、なんて勝手に想像していたりします。ロマサガ3の指揮官(コマンダーモード時)みたいな奴が中心になって召集をかけている気がするんですよね。同じこと考えたことある人、いないかしら。

*1:ちなみに、リルガミンについて熱く語るTRPGゲーマーは非常に多いです。中にはPS版すら認めない方とか、PC版以外認めない方とかがいます。またIVが一番好きとか6以降もいいんじゃないかとか、BUSHINはどう評価するとか、いやTRPG版WIZが見逃せないとか、『隣り合わせの灰と青春』がいいとか、『ワードナの逆襲』ノベライズがいいとか、押井守『注文の多い傭兵たち』はRPGデザインの古典だろとか、もうホントにいろんな立場があります。濃い世界です。私もついていけてません。

*2:これは私オリジナルの考えではなく、半年前にゲーム会メンバーの方と共にWIZ談義をした時の知見を参考にさせていただいています。ただし、発言の責任は全て私にあります。「WIZが古びない魅力を備えているのは当然として、ユーザーインターフェースの方での普及努力は、WIZ黎明期よりできることが沢山あるだろう。そうしたUIの更新を時代に合わせてキッチリやって3DダンジョンRPGの魅力を多くのユーザーに再提供した、それが『世界樹』だ」と、そういうことです。

*3:まあ、今はモンハンの方が売れてると思いますが。しかしそれをいえそもそもポケモンが(以下略))

*4:「人生よりも素晴らしいもの」は「冒険」だそうですよ。

*5:とはいわないけど