GOD AND GOLEM, Inc. (はてなダイアリー倉庫版)

2007-2012まで運用していた旧はてなダイアリーの倉庫です。新規記事の投稿は滅多に行いません。

合氣道稽古再開

 学生時代から合氣道*1をやっています。今年の4月で、満5年となります。
 今年、初夏の社会人向け審査会に個人出場することになりました。
 個人出場の場合、2名単位で審査登録をします。今回のお相手は現在大学修士に行っているわが部の元副将。お互い弐段。院生として研究を続けつつ、なんとか個人MVP取れるところまで練られればいいな、と思います。
 最近合気道を始められたid:thalionさん向けに、合気道ネタを紹介したいと思っていました。夏までぼちぼち合氣道日記を書いていこうかな、と思います。週1〜2回ペースで更新予定。

集合

 アディダスの白いショルダーバッグに袴・道着・黒帯を詰めて、大学道場に向かいます。
 今日は雨。初春の冷たさが足元をうろついています。
 いつもとは違う駅に向かって歩いていく途中、時間の見積もりを大幅に間違えていたことに気づきました。15分くらいで駅に着くかと思ったのですが、30分ほど歩きとおすハメに。
 液晶画面に付着するしずくを拭いながら、携帯で稽古相手にメールを送付。数分後に「ノープロ。」の短い返事。まあOBだからユルユルですね。現役だと罰賦*2ものですが。
 1時間近くかけて道場に着きました。午前中から稽古をしている黒帯が3名、茶帯が1名。相方は余裕をみて後から来る模様。
 男子更衣室に入って手早く着替え、黒帯を締めます。帯には名前の反対側に「火水未濟」の刺繍。よく首を傾げられます。
 袴を外で履こうとしたところで相方が到着。「ファーストキッチンで人生について考えていた」とのこと。まあ、考えちゃうよね、この時期、うん。私はうなずく。え、ふつう考えない?
 畳んでいた袴をぞんざいに拡げ、黒帯の上に袴の前を引っ掛けて、それから1分ちょっとくらいで締め終えます。着物の着付けとほとんど変わらないやり方なので、華道の真似事みたいなものです。ちなみにこの作法、剣道袴だと身につかないこともあります。私は黒帯になるまで袴の着付け方を知りませんでした。
 適当に道場を眺めながらストレッチ。ついでに前方回転受身10本少々。相方が更衣室から出てきたところで相談を開始。

審査項目決定

 私たちの流派における個人審査は、以下の5つの“演武”によって競われます。

  • 規定体技
  • 選択体技
  • 武器選択体技
  • 剣技
  • 杖技

 はじめの3つの体技については、「取り」と「受け」に分かれて2人で行います。剣技と杖技については、2人同時に行い、受け取りの区別はありません。
 なお、審査会に「試合」は存在しません。*3形式としては、社交ダンスの審査に似ていますね。いかに「大きく、リズムよく、姿勢正しく」できるかどうかが競われます。社交ダンスと違うのは、その3種の出来・不出来がそのまま「技の強さ」と密接に関わってくることですかね。流派が主張する身体理論と合致する演武が出来れば、実践でも強かろう、ということなのですね。
 もちろん、その理屈が完全に正しいとは言えませんが、演武の審査基準を満たせないのに流派の理に適った強さを持っているということはまずありませんので、武術教育としてはきわめてまっとうな基準であると私は思います。

 現役の後輩に今年の選択体技のラインナップについて聞きながら、私たちは以下のように項目を決めました。

  • 規定体技(私は「受け」
  • 正面打ち技(私は「取り」)
  • 太刀取り(私は「受け」
  • 剣技
  • 杖技

 集合してからここまでが10分くらいですかね。
 さっそくウォーミングアップがてら、規定体技の練習を始めます。お互い久しぶりなので、身体がカチコチです。

規定体技

 規定体技は、以下の6つを左右両方、12回連続で行う演武です。

  1. 正面打ち呼吸投げ
  2. 横面打ち四方投げ
  3. 胸突き小手下ろし〔「返し」とも。〕
  4. 片手取り一教
  5. 肩取り二教
  6. 後ろ手首取り三教

 合氣道の技名は、古武道諸流派の技名ほど凝ったものではありません。これらの技名はどれも、「受け側の動作/取り側の動作」という組み合わせで出来ています。
 たとえば、「正面打ち呼吸投げ」は、「正面打ち(受け)/呼吸投げ(取り)」という意味なわけです。
 つまり、規定体技で受けを努める私は、真正面から手刀を振りかざして投げられ、斜めから手刀で殴りつけて投げ返され、腹を真正面で突いてまた投げられ、片腕に掴みかかって投げられ、肩近くの胸倉を衣服ごと掴もうとして投げられ、後ろから羽交い絞めにしようとして投げられ、を左右2回ずつ、合計12回行うわけです。
 こう書いてみると、けっこう大変に見えますね。慣れてるので特に疲れはしないのですが。
 気持ちが切れてダサい攻撃をしがちだった自分に気づいたり、最短距離で手を前に突き出せていないことに気づかされたりしつつ、それでも姿勢そのものは大してヘタレていないことについては安心しました。流派でもっとも重要視される“統一体”の稽古は、引退してからのデスクワークや通勤途中でもしょっちゅうやっていたので、簡単に劣化しません。さすがに道場稽古なしで磨くのも難しいのですが……。
 ちなみに体技にはすべて時間が定められていて、確かこの体技は「坐礼→演武本番→坐礼」を通して1分40秒弱に収めないと、高得点を狙えないのですね。今日後輩に測ってもらったところ、2分30秒をオーバーしていたので、かなり急ぐ必要がありそうです。ダレ過ぎにもほどがありますね。目標は高く。

正面打ち技(選択体技)

 毎年5つほど指定される選択体技から、今回は「正面打ち技」を選択。うってかわって、今度は私が「取り」の番です。

  1. 正面打ち一教(入身)
  2. 正面打ち一教(転換)
  3. 正面打ち呼吸投げ
  4. 正面打ち小手下ろし
  5. 正面打ち切り返し
  6. 正面打ち呼吸投げ前方投げ

 それぞれ2回ずつで合計12回。見事に正面打ちばかりです。12回連続でドタマをかち割られる危険に立ち向かうことになります。
 今日ハマったのは2番目の「転換」の部分。どうも一教で踏み込んだ後の相手とのリズムが合わず、“ひっぱる”動作になってしまうようです。たぶん、転換後の気持ちの向ける方向が散漫だからだと思います(精神論ではなく、事実として)。3番目の呼吸投げも同様。どうも「片手交差取り呼吸投げ」からやり直した方がいいかもしれない。5級技ですね。奥義級の技ほど最初にやらされるというこのジョーク。先は長い。

太刀取り(武器選択体技)

 今度はまた受けに戻って、長丁場の演武を稽古します。私が鍔なしの木剣を構えて、相方がそれをことごとく華麗にもぎ取っていくという、そういう技です。「空手三倍段」というコトバがありますが、長柄の武器を持った相手にどう対応するかという稽古でもあります。最初は怖くて通すことすらできないのですが、慣れてくるとほかの技も含めた全般的能力が上達する、お役立ち体技でもあります。でも技名はさすがに長すぎるので省略。
 いまのところの問題点としては、「ラスト4本の薙ぎ払いが合氣道的に正しい斬り方とは言えない」ということですかね。後は、投げられた時の受身の問題。私はガタイが良いぶん、軽く飛ぶのがあまり上手でないので、音の鳴らない受身がどれほどできるかが今後の焦点となって来そうです。衣擦れの音しか聴こえないような受身が理想。神経線維を現役水準よりちょっと上くらいまで鍛えないといけませんね。*4

剣技・杖技

 今日は組技メインということで割愛。本当はこれもネックなんですけれどね。
 剣技は12動作を2種、杖技は22動作を2種、それぞれ連続で行います。今後稽古した時に改めて紹介しましょう。

クールダウン

 残りの20分ほどはめいめいに動作確認を行いました。
 相方が一教動作をしている最中、自分は両親指の感覚を5分ほど確かめ、小手下ろしの一人技をしたり、七類誠一郎の「インターロック」を軽くこなしたり(これは合気道とは関係ないのですが、結構効きます)、肩や脚部のストレッチをしたりしていました。家だと狭くてやりにくいんですよね。
 最後に、転換動作と入身動作を弐段同士で組んでチェック。入身動作の時の片肘の使い方が今まで間違っていたようで、腕が棒にならずに済む様になったのは収穫でした。

後片付け・退出

 袴を奇麗に畳んで袋に入れ、更衣室で道着を脱いで鞄に詰めました。
 道場の入り口で坐礼をして、玄関口でジャケットに袖を通し*5、ビニール傘をさして帰路につきました。途中相方と「てんや」で飯を食いながら、「奈良の新マスコット下妻市のシモンちゃんはどちらがより酷いか?」という、とてもくだらない話をしながら時間を潰していました。自分はまだ奈良の方が罪が軽いと思うんですよ、うん。
 今は家で茶飲んで饅頭食べながら事務仕事を片付けています。月曜日に職場で大きな仕事がありますので、その準備もしないとね。

 

*1:旧字体で「合氣道」と表現する流派があります。合気道界最大手の「合気会」とは異なりますが、流派的には根っこが近いことから、技名・作法・流儀などに多くの共通点があります。

*2:一般的にはあまり使いませんね。

*3:理由は合気道の理念に基づきます。詳細についてはここで述べません。

*4:筋繊維肥大の概念とはまた別の概念に属しますが、「鍛える」ことはできます。詳しくは「SAQトレーニング」などをお調べください。

*5:室内で上着を着てはいけないしきたりになっている