GOD AND GOLEM, Inc. (はてなダイアリー倉庫版)

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ラフ・コスター『「おもしろい」のゲームデザイン』読了,ゲーム研究まわりいろいろ

ウルティマオンライン』をはじめとして、さまざまなMMORPGデジタルゲームのデザインに関わった*1現役デザイナーによる、まとまったゲームデザイン論です。

「おもしろい」のゲームデザイン ―楽しいゲームを作る理論

「おもしろい」のゲームデザイン ―楽しいゲームを作る理論

 近いうちに、この本を使ってちゃんとしたゲーム論の整理をする予定です。

 ところで現在、遊びとゲームの研究でもっとも重要な人を挙げるとすれば、それは

 おそらくこの6名になるだろうと私は考えています。もちろん「この人たちの議論だけを知っていれば足りる」というようなものではなく、細かい議論を追っていけば切りがないのですが、少なくとも「そもそもゲームとはなんであるか」といったゲームの定義論や、「なにがゲームの面白さなのか」「ゲームを遊ぶとはどういうことなのか」といった、ゲームの受容をめぐる問いを考える際に、決して無視できないと考えているのが、彼ら6名の思想です。特にゲーム研究の最先端とされているのはサレン&ジマーマンの『Rules of Play』であると研究者グループ内でも意見がほぼ一致しており、日本でも近い将来に翻訳されることがあるかもしれません。

 また、ゲーム研究の著作に関しては、国内でゲーム研究を専門にしている井上明人氏がまとめたゲーム研究関連文献リストがあります。

■輪読会企画
http://d.hatena.ne.jp/hiyokoya/20080416

  1. 遊び論
    1. 「古典」
    2. 「ルールとは何か」
    3. 「楽しさについて」
  2. ゲームと社会の関わり
    1. 「ゲーミング&シミュレーション」
    2. シリアスゲーム
    3. 「影響論」
  3. ゲームデザイン
    1. インターフェイス論」
    2. ゲームデザイン技法」
  4. 物語論
    1. テーブルトークRPG
    2. コンピュータRPG
    3. 「制作技術」
    4. 表象文化論
  5. 産業論
    1. 「産業特性」
    2. 「ハード競争」
    3. 「地域特性」
    4. 「企業研究」
  6. オンラインゲーム
    1. 「ユーザーたちの振る舞いについて」
    2. CGM、ゲームコミュニティ」
    3. 「ゲーム内経済」
    4. Alternative Reality games」
  7. 歴史
    1. 「メディア史としてのゲーム」
    2. 「遊戯史」
    3. 「日本のゲーム草創期」
    4. 「米国のゲーム草創期」
  8. 制作の現場
    1. 「ゲームデザイナー/プランナー/レベルデザイナー」
    2. ゲームプログラマー
    3. 「グラフィッカー」
    4. サウンド
    5. 「ディレクター/プロデューサー」
  9. 関連分野
    1. 「美学/芸術論」
    2. 「漫画論」

 暫定版であるとはいえ、この議論領域の整理は、ゲームについて深く考えてみたいという人にとって、それぞれに参考になる見取り図になっているのではないかと思います。

 紹介したコスターの翻訳本は誤訳が多いようですが、前半の反・形式主義的なゲームの定義論は、非常に重要な指摘なのではないかと考えています。特に、後半の「垣根と植物」の比喩で説明されるゲーム体験のありようは、とても分かりやすかったと思います。

 ジェスパー・ジュールのゲーム定義論(田中治久氏のお陰で、日本語で読める!)とコスターの議論は、S極とN極のような好対照を成しています。この2人の議論を合わせ読めば、ゲームをめぐる基本的な立場を自己判断できるのではないでしょうか。

おまけ:ゲーム論議リンクいろいろ

 ゲーム研究団体はこちらのリンクを参照してもらうことにして、私が良く参照しているゲーム研究の個人サイトを中心にご紹介。さすがにロジェ・カイヨワのWebサイトはありませんが(故人ですしね)。

井上明人「ゲームの批評用語事典α版」
http://www.critiqueofgames.net/data/index.php?cmd=list

井上明人『Critique of Games』
http://www.critiqueofgames.net/

■増田泰子『ゲームを語ろう』
http://homepage1.nifty.com/sawaduki/

■伊藤憲二『Cerebral secreta: 某科学史家の冒言録』
http://d.hatena.ne.jp/kenjiito/

■伊藤憲二,2006.06.30「ゲーム研究の方法と意義についての序説」DiGRA第一回月例会発表
http://www.digrajapan.org/modules/eguide/event.php?eid=4(PDF)

伊藤悠『指輪世界』
http://homepage1.nifty.com/~yu/

馬場秀和馬場秀和ライブラリ』
http://www004.upp.so-net.ne.jp/babahide/

■Vampire.S『ルーンクエストというメカニズム』
http://www.google.co.jp/url?sa=t&source=web&ct=res&cd=3&url=http%3A%2F%2Fwww.glorantha.to%2F~tome%2FRuneQuestMechanism.pdf&ei=wxLGSKu8IZmI6gOH9Z3mBg&usg=AFQjCNFvFEhSeZ8wLQAL0li4bZDjxDlTsg&sig2=Mm8jjVM7C_yer1-CBobhIA

■高橋志臣『ロールプレイング・ゲームの批評用語
http://www.scoopsrpg.com/contents/hakkadoh/hakkadoh_20070927.html

■田中治久(hally)氏によるジュールの定義論解説
http://d.hatena.ne.jp/hally/20051102

■クリス・クロフォード個人Webサイト
http://www.erasmatazz.com/

■エリック・ジマーマン個人Webサイト
http://www.ericzimmerman.com/

Rules of Play: Game Design Fundamentals (The MIT Press)

Rules of Play: Game Design Fundamentals (The MIT Press)

The Game Design Reader: A Rules of Play Anthology (The MIT Press)

The Game Design Reader: A Rules of Play Anthology (The MIT Press)

■ジェスパー・ジュール個人Webサイト
http://www.jesperjuul.net/

Half-Real: Video Games between Real Rules and Fictional Worlds (The MIT Press)

Half-Real: Video Games between Real Rules and Fictional Worlds (The MIT Press)

■ラフ・コスター個人Webサイト
http://www.raphkoster.com/

■グレッグ・コスティキャン個人Webサイト*2
http://www.costik.com/weblog/

*1:もちろん『ウルティマ』のメインデザイナーはリチャード・ギャリオットですが。

*2:最新の日記タイトルが凄い。『なぜ私たちはゲーム“批評”を必要とし、ゲーム“レビュー”を必要としないのか』。また、近い場所でジュールやジマーマンに対する批判も行っており、研究者とデザイナーがゲーム批評をめぐってがっぷり四つに組んで活発に議論している様子が伺える。