『ヒーローウォーズ』と『Aの魔法陣』の類似について解説してみる――あるいは「設定」がデータであるという発想について
『ヒーローウォーズ』を読み始めたと同時に、他方から「Aマホって『ヒーローウォーズ』以降のルーンクエストに似ているんだけれど」という指摘を頂いたので、そういう視点から二つのシステムについて考察してみました。「狭義のキャラクターデータ」という区分を用いて、『ヒーローウォーズ』と『Aの魔法陣』の設計思想のあいだに、若干の類似があることを指摘しています。
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普通のTRPGは、データから設定を導出します。たとえば『ダンジョンズ&ドラゴンズ』では、「キャラクターがクレリックであるならば、彼(彼女)はペイロアの神官でもありうるだろう」という風に設定を肉付けしていくことになります。クレリックやファイターやローグなどに代表される「クラス」というルール的概念は、適用される世界観に先行する、キャラクターの原型として提供されます。
しかし、『Aの魔法陣』や『ヒーローウォーズ』は、逆です。この2つのゲームは、設定からデータを導出することでキャラクターを作成していくのです。
このような、タイプのTRPGにおけるキャラクターデータには、2通りのデータ分類が考えられます。
■2種類の「キャラクターデータ」
そして、『Aの魔法陣』においてもっとも重要な裁定基準となるのは、実は後者の、「狭義のキャラクターデータ」であり、定量化されたものを含む広義の方ではありません。*1
たとえばキャラクターの管理資源である〈成功要素〉の登録も、もしプレーヤーから提案されたそれが「設定の原型」および「設定」に反する場合は、却下されます。それは、狭義のキャラクターデータが、常に広義のキャラクターデータに対して優越している、という発想があるためです。「設定」は「ルール」として機能している、というわけです。
「設定の原型」をカルトで定め、「設定」を200文字から250文字の文章で規定し、それをりっぱな「データ」として扱う(『ヒーローウォーズ』和訳p16-7)。この姿勢が、『ヒーローウォーズ』と『Aの魔法陣』に共通していて、ほかではなかなか見られないところだ――と言うことができます。
「キャラクター・キーワード」(HW)/「原型と原設定の選択」(Aの魔法陣)
「物語風の文章250文字以内」(HW)/「設定」(Aの魔法陣)
違いは、「原型の選択」をサポートするためのランダム決定表が、『ヒーローウォーズ』では敢えて提示されていないことでしょうかね。洋ゲーらしくダウンサイジングをしていない点です。もし『Aの魔法陣』でグローランサのA-DICを作るのであれば、以下の点を決定する必要があるでしょう。
■原型:グローランサのカルト入信者
- 文化キーワード
- 職業キーワード
- 魔術キーワード
- 目的
- 付加特性
一例としてはこんな感じですね。
■文化キーワード「オーランス」の場合の原設定:
- 「自由奔放であり気高いが時に蛮勇なところがある」
- 「強壮ですこぶる身体能力に優れるが、どこか抜けている」
- 「責任感が強く極めて有能だが融通が利かない」
こうした「短文」レベルで済んでしまうものを沢山つくり、先ほどの1から5に当てはまる範囲でランダム表から選択して(D20やD100で選択できるものがよい)、どんなプレーヤーに対しても5つの短文を提供できるようにすれば、限りなく『Aの魔法陣』の操作感覚に近いグローランサ・キャラクターが作れるのではないかと思います。さらには、「200文字なんて書けないよ」という苦情もかなり削減されるのではないかと。そこが面白いところだと思うのですが、それっぽい単語を拾う労力を軽減するという点では、役に立つ発想ではないかと思います。
ルンケ初心者なのでボロが出ると困る。今日のメモはこの辺で。