「平均値と中央値が一致しなくても良い」とはどういうことか?
先日私は、Role&Roll42号を引き合いに出して、こんな不親切な記事を書きました。
今の市場のモデルとして考えられるのは、以下の3パターンかな。「1月あたり3億円の売り上げ」と仮定した場合の人数と平均支出額の組み合わせを書いて見ました。
- 1万人が一人あたり平均30,000円支払う市場(月3億円)
- 10万人が一人あたり平均3,000円支払う市場(月3億円)
- 100万人が一人あたり平均300円支払う市場(月3億円)
今のTRPGは、たぶん「1」と「2」の間のうち、どちらかのケースに近い市場になっているんじゃないかと思うのですが、本当にどうなのかは、市場統計を取ってみないとわかりませんね。
最終的に私は、一介のアマチュアゲーマーとしては、「100万人が一人あたり平均300円払えば成立する市場」がTRPG市場において成立すれば、色々面倒がなくていいなと思います。色々説明不足なので誤解を招きかねない発言だと思いますが、平均値と中央値が一致する必要はありませんので注意してくださいね。
(高橋2008.03.17『Role & Roll』42号の冒頭で紹介されてる製品の金額合計)
この中の一文。
平均値と中央値が一致する必要はありませんので注意してくださいね。
これ、何言ってるんだかわからないって人が多かったみたいです。そもそも「月3億円」がウソップだということはさておき*1「平均」に関する解釈がばらけがちだったみたいです。
説明不足だったみたいですね。Google Spread Sheetを使って説明してみましょう。
上のリンク先を開いた後、以下の点に注意して読んでみてください。
- 提示したグラフは、TRPG市場のデータ的事実と一致するとは限りません。
- 提示したグラフは、「平均値」と「中央値」の違いについて調べたものです。
- 釣鐘状分布と双瘤らくだ分布では、「平均値(アベレージ)」がほぼ一致します。
- 釣鐘状分布と双瘤らくだ分布では、「中央値(メディアン)」は一致していません。1000円ものズレがあります。(色つきの部分をみてください)
- TRPG市場が月13〜15億の売り上げなんてことはまずありえないでしょうから、この2つの分布の傾向のうちいずれかが(万が一)正しかったとしても、金額のレベルそれ自体は大幅に低く見積もりなおすことになるでしょう。*2
大体OKでしょうか?
ようするにこのグラフで何がいいたいかというと、「平均値」が同じだとしても、そこで考えられる「分布」そのものにはいくらでもバリエーションがありえますよということなんですよ。その代表例2つとして、「釣鐘状分布」と「ふたこぶラクダ分布」を仮に設計してみました。この2つの分布の「平均値」が同じだ、ということに違和感をもたれた方は、その違和感を疑ってください。
この「平均」と「分布」の関係は統計の基本的な知識なので、そのことを示すために「平均値と中央値は違いますからね」と書いたのですが、身内に聞いてみても「すげえわかりにくいよ! 常識じゃねえよ!」とのことだったので、グラフで改めて示してみた次第です。どうもすみません。
「平均300円」というだけで、「釣鐘状分布の中央値300円」を想像してしまいがちな方は、くれぐれもご注意ください。いろんな分布が「平均300円」には含まれます。*3
なお、ふたこぶラクダというのは、偏差値統計などでよく出てくる「2つのグループに大きく分かれている分布」の俗称です。
右上と右下のグラフを比較すると、「人数」だけで見れば低額商品を買う層が圧倒的だったとしても、実際の購入総額では、ハイエンド商品を買うグループと拮抗、あるいは優越する可能性があるということになりますね。山の大きさが左右で逆転しているのがちょっと面白いな、と思いました。もちろん、この統計はウソばっかなので(笑)、これを元にどんな事実も語れないわけですが、まあ、そういうこともあるよということです。