『ウォーハンマー第二版』リプレイ「魔力の風を追う者たち」第二回
先月末に、『GameJapan』2008年04月号が発売されました。
この中に、私もプレーヤーとして参加している*1『ウォーハンマー』第二版のリプレイが収録されています。
これは魔術系追加サプリメント『魔術の書:レルム・オブ・ソーサリー』の販促として開始されたリプレイです。そのため、キャリア配分が「中堅魔術師2人」「魔女1人」「ルーン鍛冶1人」という、非常に偏った構成になっています(笑)。けれど、そんな面子こそが、〈背景世界〉である「オールドワールド」の魔法的要素を紹介するのに、とても適しているのでした。
ちなみに私は、アルトドルフ八大魔法学府に所属する影の魔法使い、エックハルト・ドルンフェルダーを担当しています。「灰色の魔法学府」の特性上、幻影系魔法にばかり秀でてしまい、どんどんローグっぽい陰謀家になっていっています(笑)。この調子だと、最終回はどうなることやら……。
さて、前回に引き続いて〈ゲームマスター〉およびリプレイ編集を務めるのは、岡和田晃氏(id:Thorn)。私は今回も、商業リプレイの収録であることを忘れてしまうくらい楽しませていただきました。岡和田氏は、先日新たに創刊された『Read&Lead』のD&Dエベロンリプレイや、*2『季刊R.P.G.』や『Role&Roll』で知的示唆に富んだノウハウ記事を執筆されていいます。最近ご存知になったゲーマーの方も多いのではないでしょうか。
ちなみに岡和田氏は、純文学方面でも精力的に活動されている気鋭の文芸評論家でもあります。私のBlogには、TRPGゲーマー以外にも、文芸・娯楽小説に関する内容の濃い批評を通読されている方もいらっしゃいますので、よろしければ氏のブログにも立ち寄っていただければと思います。
さて、今回の見所は以下。(ネタバレを含みます)
■「魔力の風を追う者たち」第二回のみどころ
- 冒頭シーン、NPCのドロテーアが、疫病抵抗*3に関する判定でいきなり死亡してしまった。
- もう一人の疾患者であるドワーフのゴンツが、運命点で救われた代わりに、【混沌変異】*4で獣じみた外見に。
- PCであるレジーナの悲劇っぷりは、国内TRPG史上最強かもしれない。*5
- 成績不振のダメ魔狩人「フレイザー」が、とってもいい味出してます。
- それをヨイショするガテン系の魔術師ウルフガングもなんかかわいいです。
- 中堅魔術師がなんかバイトしてる。*6
- 〈キャラクタープレイ〉否定派として盛大に誤解を受けているあの高橋志臣が、家庭教師の〈キャラクタープレイ〉をしてる。*7
- しかも貴族にみつかってからのエックハルト(の中の人)のへたれっぷりが、プレーヤーの素をさらけだしている。あいかわらず長いものに巻かれるタイプである。*8
- 冒頭に死んだはずのレジーナの親友ドロテーアがさっそく「素材」として再利用されてしまっている。
- それはエックハルトが墓守に対するガンつけに失敗していたためであった。*9
- ドワーフ三兄弟のガンツが【クリティカル・ヒット】を喰らい、あえなく失血死する。*10シルダ役の香子さんが運命点を消費することで辛くも生き延びる。
- 最後の最後で、儀式魔術「糞ったれ兵士のありえざる行進」の効果により、混沌神コーンを崇拝する勢力がミニチュアにして20体以上配置され、PCを恐怖のどん底に陥れる。*11
- そしてアルトドルフ大炎上。
[rakuten:book:12823673:detail]
- 作者: クリスプラマス,Chris Pramas,待兼音二郎
- 出版社/メーカー: ホビージャパン
- 発売日: 2006/12/28
- メディア: 大型本
- 購入: 2人 クリック: 81回
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魔術の書:レルム・オヴ・ソーサリー (ウォーハンマーRPGサプリメント)
- 作者: マリアン・フォン・シュタウファー,待兼音二郎,鈴木康次郎,見田航介
- 出版社/メーカー: ホビージャパン
- 発売日: 2008/02/15
- メディア: 大型本
- クリック: 1,047回
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全4ページのリプレイでよくぞここまで、という編集ぶりです。内容も前回に引き続き、ほぼリアル・セッションの適切な要約になっています。
本当はTRPGに割いてもらう総ぺージ数がもっとあれば、リプレイの紙幅も増え、ルール解説やシチュエーションもるのですが……話によれば、アンケート結果に好評が多数あると、実際に紙面編集方針の会議にそのアンケート内容が持ち出されるそうです。ですから、『Game Japan』でTRPGの記事をもっとたっぷり読みたいという方は、ぜひ購入された後、「もっと『TRPGの砦』にページを!」と希望を出してくださればと思います。どうぞよろしくお願いいたします。*12
おまけ:中堅魔術師「エックハルト・ドルンフェルダー」のキャラクターシート
ところで、キャンペーンに参加している時に、「足りないなあ」と思っていたものがあるんですよ。
それは、キャラクターの「キャリア成長」を記すシート。
『ウォーハンマー』は、基本ルールブックだけでも110以上ある「キャリア」をハシゴしながら成長していくゲームですから、
- 「いつ経験点を得たのか」
- 「経験点をどんな用途(能力・技能・異能)に消費したのか」
- 「キャリアチェンジはいつ行ったのか」
などを一枚にまとめられる表があれば、各々のPCのキャリアパスに対して色々な想像がはたらくのですね。
さらに、万が一成長ルールを間違えた時にも、どこを修正すればいいのか忘れずにすみます。初期能力値を決めるルールは、簡潔に書かれていますがわりと煩雑なので、キャリアシートがあるといつでも見直せて安心です。
残念ながら、Excel版の表については、まだ個人的に使えるものすら作れていないのですが、経験点2000点に第二回セッションまでの800点を加えた、2800点の中堅魔術師「エックハルト」のキャラクターシートを公開します。
ちなみにこのリプレイでは、「名前や特徴も全部ダイスで決めなさい」という本社からのお達しにより、ダイス目で本名が決まっています(笑)。まあ姓の方は私が勝手に付けさせていただきましたが。二話目で普通に採用されていて「いいのかしら?」と思ったくらいです。
■名前 「エックハルト・ドルンフェルダー」 ■基本的な特徴・設定 年齢:30歳 性別:男 身長:6'1''(約186cm) 体重:150ポンド(約68kg) 瞳色:青灰色 髪色:褐色 星座:通訳ドレーク(勇気の星座) 兄弟姉妹:2人(兄と妹が1人ずつ) 出身:ミドンランドの/繁栄した街(ミドンへイムの郊外) 容貌:「物騒な眼(〈威圧〉判定+5%修正)」&「ズタズタの耳」 ■キャリア 見習い魔術師(0→1100xp) →中堅魔術師(1100→2400xp) ■経験点 第一回:2000点→2400点 第二回:2400点→2800点(この400点分は第三回開始時に使用する) ■プロフィール A.初期プロフィール(キャンペーン開始直後のダイスロール): 武・射・筋・頑・敏・知・志・協 27・30・35・34・30・32・32・29 攻・耐・筋+頑+移・魔・狂・運 01・11・03・03・04・00・00・02 B.初期プロフィール(「頑」「知」「協」の3つに対し、異能による修正あり): 武・射・筋・頑・敏・知・志・協 27・30・35・39・30・37・32・34 攻・耐・筋+頑+移・魔・狂・運 01・11・03・03・04・00・00・02 C.現在プロフィール(第二回終了時): 武・射・筋・頑・敏・知・志・協 27・30・35・39・35・57・57・39 攻・耐・筋+頑+移・魔・狂・運 01・13・03・03・04・02・01・02 D.成長表(第ニ回終了時,見習魔術師+中堅魔術師) 〔〆はチェックを、□は成長の余地を表す〕 武技(+05%):□■■■■■■ 射技(+05%):□■■■■■■ 筋力 (NA):■■■■■■■ 頑健(+05%):□■■■■■■ 敏捷(+15%):〆□□■■■■ 知力(+20%):〆〆〆〆■■■ 意志(+25%):〆〆〆〆〆■■ 協調(+10%):〆□■■■■■ 攻撃 (NA):■■■■■■■ 耐久 (+3):〆〆〆■■■■ 筋+ (NA) :■■■■■■■ 頑+ (NA) :■■■■■■■ 移動 (NA):■■■■■■■ 魔力 (+2):〆〆■■■■■ 狂気 (NA):■■■■■■■ 運命 (NA):■■■■■■■ ■技能 (00:「技能習得/能力値そのまま」,10:「+10%ロール」,20:「+20%路^る」をそれぞれ表す) ・00(+05)〈威圧〉(筋or協) >生来の特徴「物騒な眼」により+05% ・00〈学術知識:魔術〉(知) ・00〈言語:古語〉(知) ・00〈言語:ライクシュピール〉(知) ・00〈察知〉(知) ・00(+10)〈忍び歩き〉(敏) >“市街地”限定で、盗賊の異能《野良猫》により+10% ・00〈常識:エンパイア〉(知) ・10(+10)〈姿隠し〉(敏) >“市街地”限定で、盗賊の異能《野良猫》により+10% ・00〈世間話〉(協) ・00〈捜索〉(知) ・00〈秘術語:魔法語〔リンガ・ブレスタンティア〕〉(知) ・10(+10)〈魔風交信〉(志) >異能《エーテル順応》により+10%,合計+20% ・00(+10)〈魔力感知〉(志) >異能《エーテル順応》により+10% ・00〈読み書き〉(知) ■異能 ・《エーテル順応》〔見習魔術師〕 >〈魔風交信〉&〈魔力感知〉に+10% ・《火球威力増大》〔中堅魔術師〕 >射撃呪文ダメージ値+1 ・《強靱》〔見習魔術師〕 >頑+05%(permanent) ・《初歩魔術:秘術》〔見習魔術師〕 >「白熱光」「音響」「落とせ」「鬼火」「魔法の投げ矢」を取得 ・《追加呪文:「偽行動」》 ・《追加呪文:「影のナイフ」》 ・《追加呪文:「影のマント」》 ・《低姿勢》〔種族のランダム異能〕 >協+05%(permanent) ・《野良猫》〔盗賊〕 >市街地でのみ〈忍び歩き〉&〈姿隠し〉に+10% ・《秘術魔法体系:影の「秘法」》〔中堅魔術師〕 >「移り行く容貌」「影馬」「影炎上」「影化」「記憶消去」「ごまかしの影」「死の影」「絞め殺し」「見る者次第」「無注目」を取得 ・《分別》〔見習魔術師〕 >知+05%(permanent) ・《魔法耐性》〔種族のランダム異能〕 >魔法に対する意志力テストに+10% ■武器と所持品 ・ソード ・クォータースタッフ ・初期アイテムセット ・背負い袋 ・活版印刷本 ・グリモア ・筆記セット ・ママメルキンのなんでも治しちゃうわよ ■呪文リスト ・《初歩呪文:秘術》 「白熱光」 「音響」 「落とせ」 「鬼火」 「魔法の投げ矢」 ・《秘術魔法体系:影の「秘法」》 「移り行く容貌」 「影馬」 「影炎上」 「影化」 「影のナイフ」(追加呪文) 「影のマント」(追加呪文) 「記憶消去」 「偽行動」(追加呪文) 「ごまかしの影」 「死の影」 「絞め殺し」 「見る者次第」 「無注目」 ■キャリア履歴(0→2400) ──┬─────────────────────────────── (xp)│成長項目(「limit」はキャリアごとに定められた成長限界を表す) ──┴─────────────────────────────── START! ──すっぴん(=生得的要素)──────────────────── 0000 「容貌:物騒な目」 →技能:〈威圧〉+5% 0000 《低姿勢》 →能力:協+5%(perment) 0000 《魔法耐性》 ──見習い魔術師(初期キャリア)────────────────── 0000 〈学術知識:魔術〉 0000 〈言語:古語〉 0000 〈察知〉 0000 〈捜索〉 0000 〈秘術語:魔法語〉 0000 〈魔風交信〉 0000 〈魔力感知〉 0000 〈読み書き〉 0000 《エーテル順応》 0000 《分別》 0000 《初歩魔術:秘術》 0000 「クォータースタッフ」「背負い袋」「活版印刷本」 0000 魔+1(初期ボーナス) ──見習い魔術師(成長開始)─────────────────── 0100 知00→05 0200 知05→10(limit) 0300 敏00→05(limit) 0400 志00→05 0500 志05→10 0600 志10→15(limit) 0700 協00→05 0800 耐00→01 0900 耐01→02(limit) 1000 《強靭》 1100 キャリアチェンジ ──中堅魔術師(成長続行)──────────────────── 1200 〈魔風交信〉+10% 1300 知10→15 1400 志15→20 1500 志20→25(limit) 1600 《秘術魔法体系:影の「秘術」》 1700 《火球威力増大》 1800 《追加呪文:「狼狽」》 1900 《追加呪文:「影のナイフ」》 2000 《追加呪文:「偽行動」》 ──キャンペーン第一回終了──────────────────── 2100 《追加呪文:「影のマント」》 2200 〈威圧〉 2300 〈姿隠し〉 2400 知15→20(limit) ──キャンペーン第二回終了────────────────────
このキャリアシートを作る楽しみが、『ウォーハンマー』の一番魅力だったりします。
もし、「〈背景世界〉がえぐすぎて楽しめたものじゃないよ」としりごみされている方は、プレーヤーのPCに初期経験点を1000点ほど与えて、キャラクターのビジョンを成長込みで考えさせてから開始するというやり方もいいと思いますよ。
PCの成長への欲望さえはっきり全員が見通せれば、泥臭くて世知辛いくて悲惨な“だけ”では全然なくなります。
PCの飄々としたロールを見ていただくという意味でも、ぜひこのキャンペーンは手にとって読んでいただきたいと思います。
*1:高橋志臣〔たかはし・むねおみ〕は筆名です。あしからず。
*2:特に40ページ以上にも及ぶ『エベロン』のリプレイは、国内で入手できるD&D商業サポートしては、屈指の濃度を誇ります。ぜひ手に取ってみてください。他には『ひきだしの中身』で有名な内山靖二郎氏の『クトゥルフ神話RPG』リプレイ、安田均社長自らがGMをつとめる『六門セカンド』リプレイの、合計3つが掲載されています。 Role&Roll EXTRA Lead&Read Vol.1
*3:前回のキャンペーンで、娼婦街に出入りしていた彼女は、あわれナーグル腐敗病に罹ってしまったのだった。
*4:基本ルールブックp245表11-1を参照のこと。
*6:ルール上、八大魔法学府に所属する魔術師は、経験点を100点支払うことで、自由に基本キャリアを行き来することができる。そのルールに加え、中堅魔術師にはいわゆる「学費」を支払う義務があるので、ウルフガングとエックハルトは手に職をつけなければならなかった。
*7:というのは、高橋が〈キャラクタープレイ〉を否定しているというのは真っ赤な嘘だから。……以下に書く予定だった〈キャラクタープレイ〉に関する解釈は長くなったので、切り出して3月3日のエントリとして再録しました。
*8:「野山会」の2人にはアタマがあがらねえや。はっはっは。orz
*9:判定は成功したのだけれど、成功値の較べあいで競り負けてしまった。詳しくは基本ルールブックp91「対抗技能テスト」を参照。
*10:ウォーハンマーは耐久度が0になったとたん、【クリティカルヒット】を誘発する。クリティカルヒットはd100で判定する。この出目が低ければ低いほど、「死亡」に直結するようなダメージ系の設定が付与されるようになる(ウォーハンマーは下方ロールだが、このクリティカルヒットの判定だけは、高いほうが助かりやすいようになっている)。ゴンツは耐久度を上回るダメージを腕部に受けたが、比較的大きな出目、リプレイのような処理となった。
*11:今までやったD&D3.5でも、あれほど恐怖したことはなかった。この怖さの演出は、D&Dのヘヴィユーザーである岡和田GMの面目躍如でしょう。
*12:私は『週刊少年ジャンプ』を読んでいた頃から読者アンケートを軽視していたのですが、どうも出版業界は私のテキトーな予想と裏腹に、ちゃんと調べて検討資料にしているそうなのですよ。同じような考えをもたれている方がいらっしゃったら、ぜひ「投票」のつもりで送ってみてください。