GAMEJAPAN誌リプレイ「混沌狩り」完結
魔術師オンリーキャンペーン「魔力の風を追う者たち」と合わせると計6回になる、ファンタジーロールプレイングゲーム『ウォーハンマー』第二版の連載リプレイが、今月号で一区切りを迎えました。
GAME JAPAN (ゲームジャパン) 2008年 09月号 [雑誌]
- 出版社/メーカー: ホビージャパン
- 発売日: 2008/07/30
- メディア: 雑誌
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これまでの私のキャンペーン紹介記事は、それぞれ以下のリンク先に置いてあります(キャラクターシートやその他TIPSなども置いてあります)。
- 2008年03月号「魔力の風を追う者たち」第1回
- 2008年04月号「魔力の風を追う者たち」第2回
- 2008年05月号「魔力の風を追う者たち」第3回
- 2008年07月号「混沌狩り」第1回
- 2008年08月号「混沌狩り」第2回
- 2008年09月号「混沌狩り」第3回(このエントリ)
この連載リプレイの中で、私は、「影の学府の魔術師エックハルト」役(魔術師キャンペーン)を3回、「雇われ魔狩人コンラッド」役を3回、それぞれ担当させていただきました。
どちらも、GMである岡和田さんの公正かつ入念な裁量のおかげで、非常に楽しみ甲斐のある、骨太なキャンペーンを遊べました。特に後半3回は、岡和田さん自身が新作地域紹介サプリメント『ミドンヘイムの灰燼』翻訳を進めていたということもあり、メインの舞台となるミドンヘイムに関する広範な地理知識がゲームをより色彩ゆたかなものにしてくれました。
当時未訳のままゴリゴリ活用されていた『ミドンヘイムの灰燼』は、数日前に日本語訳が刊行されたばかりです。
- 作者: グレアム・デイヴィス,岡和田晃
- 出版社/メーカー: ホビージャパン
- 発売日: 2008/07/31
- メディア: 単行本(ソフトカバー)
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また、一緒に〈プレーヤー〉として苦楽を共にした香子さん、阪本さん、横井さんとの協力なしには成り立たないものでした。毎回4ページという紙面の都合上、なかなか現場の雰囲気についてはお伝えできないかもしれませんが(オールドワールドを生きているにもかかわらず、緊張感がありながらも笑いやユーモアの絶えない、よいセッションの空気がありました)この5人でセッションができたことを嬉しく思います。リプレイ収録に限らず、また機会があればこのメンバーで遊びたいと強く希望しています――って、各人に実際に伝えた方が早いのですけれども(笑)、それくらい面白く、モチベーションを高く持って参加できるセッションメンバーであったことを、一区切りのついた今、改めて一プレーヤーとして発言しておきたかったのでした。
さて「混沌狩り」の最終回、私はステレオタイプ的な魔狩人からは、すっかり逸脱したロールプレイを行っています。「正規の魔狩人ではない」という中途半端な設定を最初から背負わせた帰結として、この結末は私にとって納得できる〈意志決定〉ではありました。しかしそれでも、「ほかの、別の選択肢もありえたのかもしれない」という気持ちはあります。
私は、そのような「自分はまた同じ状況に遭遇したら、もしかしたら別の選択肢を選び取っているかもしれない」という気持ちになれるほど、真剣に考える価値のある課題が提供され続けることこそが、TRPGというゲームを継続的に楽しむにあたって、何よりも重要なことだと思っています。
これは単に戦略的な、いかにもシミュレーションゲーム的な要素に限ったことではありません、背景設定の整合性や、〈キャラクターのロールプレイ〉に関することも含めて言っています。〈ゲーム〉の7要素をしっかり揃え、〈目標の多層構造〉が設計された上で、それくらい悩ましい問題について取り組めるのならば、その具体的な課題が、D&D3eシリーズくらいウォーゲーム的に洗練されたものであろうと、グローランサシリーズのように〈背景設定〉が重大な参照項として機能するものであろうと、FEARのシーン制TRPGシステムのようにキャラクター解釈が柔軟なゲームであろうと、本質的な差はないと思っています。*1
そして『ウォーハンマー』というゲームは、
- ウォーゲームとBRP系ファンタジーゲーム、両方の文脈を汲んだシビアな戦闘バランス。
- (つまり、〈役割分担〉の促進。)
- 背景世界「オールドワールド」の細密な設定がもたらす社会的な葛藤の数々。
- (つまり、〈ロールプレイング〉をゲームとして楽しむ際の高度な裏付け。)
- ゲームマスターが迷い無く最大の〈障害〉としてプレーヤーに叩きつけられる“混沌”の詳細かつ網羅的な記述。
- (つまり、毎回の〈課題の解決〉に関する強烈なインセンティヴをもたらすもの。)
- 「キャリアシステム」によってもたらされる〈プレーヤーキャラクター〉の情報管理。
- (上記3つを、より洗練されたかたちで提供するための〈ゲームコンセプト〉を司る部分。ウォーハンマーのシステムデザインにおける心臓部。)
この4つが複雑に絡み合うことによって、エンドユーザに魅力的な〈意志決定〉を提供していると評価することができるでしょう。しかもその一連の試みは、未訳資料を読まなければ味わえないというものではありません。日本語で刊行された第二版の一連の著作だけでも、十分に評価に耐えうるものだと思います。
ですからぜひ、このリプレイを読まれて興味を持った方は、『ウォーハンマー』というゲームコンポーネントに、触れてみてください。単に買って死蔵してしまうのではなく、音楽ファンが自ら手にとって素晴らしい演奏をオーディエンスに聞かせるように、沢山の魅力的な〈ゲーム〉をいろんな人に提供してください。それが、結果的に、システムの価値を高めることにつながります。
私は、〈システムデザイン〉と〈マスターリング〉の関係は、「楽器制作」と「楽曲演奏」の関係に近いと思っています。少しでも多くの人が、TRPGシステムという“楽器”の魅力を“演奏”を通じて伝られるような環境をサポートできるよう、いろんなことを考え、実行していきたいと思います。
なお、『GAME JAPN』誌上のウォーハンマーサポートは、まだまだ継続される予定です。*2今後の企画については岡和田さんのこちらの腹案を見て頂くとして(「オラに元気をわけてくれ!」とのこと。ご協力よろしくお願いします!)、面白い企画があればまた一ファンとして積極的に紹介してゆければと思っています。
やりのこし
コンラッドの最終的なデータシートや、その他セッション運営の際に役に立つ情報なども、今後紹介する予定です。
*1:もちろん〈意志決定〉を提供する際の、システムデザイナーによる個々のデザインスタイルの差異は大事です。〈ゲーム〉の7要素とTRPGの4大目標は、それらのデザインスタイルの差を否定するようなものではなく、むしろその差異を公正なかたちで際だたせ、現場の運用に役立たせるための、批評的な分類として理解してください。
*2:私は雑誌記事の制作の端っこに関わらせて頂くまで、アンケートはがきの重みをほとんど理解していませんでした。しかし、1枚の意見でも、それは編集部にとって、記事の継続を左右する重要な鍵となるそうです。未だに実感がわかないのですが(笑)、どうもそういうことらしいので、『ウォーハンマー』が好きな方は騙されたと思ってはがきを投函してみてください。